沈降シリカ代替としての籾殻シリカ
材料としての位置
沈降シリカはタイヤ用途を中心に大量に使用されるフィラーであり、珪砂から水ガラスを経由して沈殿させる化学プロセスで生産される。高温炉と化学設備を必要とするためエネルギー消費が大きい。
これに対し籾殻には約15〜20%のシリカが含まれる。燃焼により籾殻灰を得ることで、比較的短い工程でアモルファスシリカ原料を得ることができる。このため農業副産物由来のシリカとして注目されている。
ただし材料としての成立には次の条件がある。
・アモルファスSiO₂
・高比表面積
・粒子構造の制御
燃焼温度が高すぎるとシリカが結晶化し、反応性が低下する。したがって籾殻シリカは単に燃やせばよい材料ではなく、燃焼条件の管理が重要になる。
籾殻回収と処理構造
集中処理と分散処理
籾殻シリカの議論では籾殻回収がボトルネックとされることが多い。しかし実際の流通では籾殻は農家で発生するのではなく精米工程で発生する。
農業構造は次の通りである。
農家
↓
精米所
↓
米流通
籾殻は精米所で集中して発生する。精米所は数千〜数万トン規模の籾殻を処理するため、籾殻ボイラーを設置している例が多い。ここで蒸気や電力を得ると同時に籾殻灰が発生する。
そのため実態としては
精米所クラスター
↓
籾殻燃焼
↓
籾殻灰
↓
シリカ精製工場
という集中構造に近い産業になっている。
一方で籾殻は嵩密度が低い。
- 籾殻 100〜150 kg/m³
- 籾殻灰 600〜900 kg/m³
このため籾殻をそのまま輸送するより、灰にして輸送する方が物流効率は大きく改善する。
分散一次処理の可能性
カントリーエレベーター単位
籾殻利用を考える場合、カントリーエレベーターや精米拠点単位での一次処理という構想が考えられる。一次処理の段階には大きく三つのレベルがある。
- 燃焼のみ:
籾殻→ 籾殻灰 - 灰前処理:
籾殻灰→ 酸洗浄→ 不純物除去 - 化学抽出:
籾殻灰→ NaOH抽出→ 酸沈殿→ シリカ
この中で分散処理として成立しやすいのは燃焼段階である。燃焼設備はエネルギー設備として導入可能であり、発電や蒸気供給とも両立する。
一方でシリカ抽出工程は化学プラントに近く、薬品管理や排水処理を伴うため小規模分散化は難しい。
その結果、現実的な構造は次のようになる。
地域拠点:籾殻燃焼
↓
籾殻灰
↓
集中化学処理
↓
シリカ製造
すなわち
- 燃焼工程:分散
- 化学工程:集中
という二段階構造になる。
籾殻シリカは農業副産物由来材料として語られることが多いが、実際には精米・エネルギー設備・化学精製が組み合わさった産業構造として成立している。籾殻回収の問題は、農業分散ではなく加工拠点の構造として理解する必要がある。