伸縮疲労
クラック発生という現象
ゴム材料の疲労評価で最も古典的な試験の一つが伸縮疲労である。DeMattia試験などが代表的で、試験片を繰り返し曲げ伸ばしする。観察対象は単純である。
クラックが生じるかどうか。
材料の内部にはもともと不均一がある。フィラー凝集、架橋分布、界面の弱点などである。繰り返し変形の中で局所応力が集中すると、その弱点から微小亀裂が発生する。伸縮疲労試験は、この発生のしやすさを観察する試験である。
評価としては次のような形になる。
伸縮疲労試験で見ているもの
・クラック発生回数
・クラック数
・クラック長さ
・一定回数後の表面状態
材料側の要因としては以下が関係する。
・フィラー分散
・架橋密度
・局所弾性率差
・界面の弱さ
つまりこの試験は、まだ割れていない材料がどれだけ割れやすいかという性質を見ている。
da/dN
クラック進展という現象
da/dNは全く違う視点の評価である。ここではクラックは最初から存在する。試験片にはあらかじめ切れ込みを入れる。
そして繰り返し変形を与える。
その結果、クラックがどれだけの速度で伸びるかを測定する。
da/dNは次の意味を持つ。
da/dN:
クラック長さaが繰り返し回数Nに対してどれだけ増えるか
つまり「一回の変形でクラックがどれだけ進むか」である。
この試験では次のような曲線が得られる。
疲労クラック進展曲線
・低エネルギー領域
・安定進展領域
・急速破壊領域
支配する要因は発生とはかなり異なる。
進展に効く要素
・ヒステリシス
・エネルギー散逸
・フィラー架橋構造
・ポリマーの伸長結晶化
・界面ブリッジング
クラックの先端でエネルギーがどのように消費されるかが重要になる。
発生と進展
二段階の疲労
ゴムの疲労破壊は単一の現象ではない。大きく二つの段階に分けられる。
疲労破壊の構造
第一段階:クラック発生
第二段階:クラック進展
この関係を整理すると次のようになる。
評価の違い
伸縮疲労
・対象 クラック発生
・初期欠陥 不要
・評価 発生しやすさ
da/dN
・対象 クラック進展
・初期欠陥 必要
・評価 進展速度
両者は必ずしも一致しない。クラックが生じにくい材料でも、いったん発生すると速く進む場合がある。逆に、発生は比較的早いが進展が遅い材料もある。
実際のタイヤの破壊では、進展段階が寿命を支配する場合が多い。微小な傷は避けられないためである。材料の内部でクラックがどれだけエネルギーを消費しながら進むか、その構造が耐久性に大きく関係する。
疲労評価という言葉の中に、実は異なる現象が含まれている。伸縮疲労とda/dNは、その二つの側面を分離して観察するための指標である。