今年の議論の軸
Tire Technology Expo は、タイヤ設計、材料、製造、試験技術などを扱う世界的な技術会議であり、三日間で160人以上の研究者や技術者が講演する規模になっている。
予備プログラムを見ると、今年の議論は大きく四つの軸に集約される。
・規制とタイヤ設計
・材料と化学
・データとデジタル化
・製造と検査
これはここ数年の流れをほぼ踏襲しているが、規制と循環材料の話題がさらに強くなっている。
規制と産業構造
初日のセッションは、タイヤ産業の将来と規制環境の議論から始まる。
主な論点
・EU規制がタイヤ設計へ与える影響
・貿易構造の変化
・UNECEによる規格調和
・Euro7などの新規規制
タイヤは安全部材であるため、材料開発や構造設計が規制条件に直接拘束される。欧州規制の動向が設計条件を決めるという構図は、今後も続く。
材料研究の焦点
材料セッションでは、従来のゴム材料研究に加えて、持続可能材料の比重が増えている。
研究テーマ
・新しいSSBR
・バイオ由来シリカ
・機能化液状ゴム
・バイオ系添加剤
例えばSSBRの改良や、バイオ廃棄物から作るシリカなど、石油依存を下げる材料研究が増えている。
これらは単なる代替材料ではなく、転がり抵抗、加工性、耐久のバランスを維持することが前提になる。
可逆結合材料
材料分野では、可逆結合を持つポリマーの研究も出ている。
例
・可逆結合を持つSBR
・自己修復ネットワーク
・再加工可能エラストマー
これらは循環材料設計と関係する。従来の硫黄架橋は不可逆に近いが、可逆ネットワークを導入すると再加工の可能性が広がる。
ただし現段階では研究段階であり、量産タイヤ材料として主流とは言えない。
製造とデジタル化
製造分野では、AIと自動化が中心テーマになっている。
具体的には
・AI検査
・自動品質検査
・トレーサビリティ
・スマートタイヤ
例えば製造検査では、画像解析やAIによる欠陥検出などが議論されている。
同時に、タイヤ製造全体をデータ化する流れも強い。
サプライチェーンのデータ化
もう一つの大きなテーマはデータである。
議論の対象
・製造データ統合
・材料トレーサビリティ
・品質データ管理
タイヤ産業は長い間、経験的な工程管理に依存してきた。現在は製造ラインのデータ化によって、材料配合、加工条件、品質検査を統合する方向へ進んでいる。
この流れは、EVタイヤやスマートタイヤとも関係する。
タイヤは単なるゴム製品ではなく、センサーやデータを含む部品へ変わりつつある。
全体を見ると、今年の技術会議の議題は大きく変わっているわけではない。
しかし、規制、循環材料、データ化の三つが同時に動いている点が特徴になっている。
タイヤ技術は材料工学だけでなく、規格、データ、製造システムを含む総合技術として再編されつつある。