再生前提のタイヤ材料設計

2026-03-16

循環型タイヤ材料の現実的な設計思想について、灰分源、ポリマー構成、可逆架橋の三つの観点から整理し、サイドウォールやベーストレッドから始める配合案を検討するメモ。

循環型タイヤ材料の前提

循環型タイヤという言葉は、しばしば「完全にリサイクルできるタイヤ」という意味で使われる。しかし現実の材料設計では、そのような単純な目標は成立しない。現在のゴム配合は、複数ポリマー、多様な補強材、各種樹脂やオイルを組み合わせた非常に複雑な系であり、使用後に完全分離して再利用することは難しい。

したがって循環設計の現実的な目標は、全量回収ではない。初回性能を大きく落とさず、使用後の再生歩留まりを高める配合に寄せることになる。考え方としては次のようになる。

・新品性能
95から98程度を維持する

・再生材利用後
85から90程度を維持する

このように、新品時の絶対性能ではなく、二周目の材料許容量を含めた設計を行う。現在のrCBや再生ポリマーの品質水準とも整合する。

材料設計の重心

循環設計では、従来の配合開発とは評価軸が変わる。通常の評価項目に加え、再粉砕後の再配合適性を見る必要がある。

主な観点

・灰分残渣
・再混練時のMooney
・再加硫後のtanδ
・Payne effect
・TGA残渣

新品性能だけでなく、材料の二周目の挙動を見ることが配合設計の中心になる。

 

配合設計の三つの方向

循環適性を上げるために重要な要素は三つある。

灰分源を減らす

熱分解後のrCB品質を劣化させる主因は灰分である。ZnO、シリカ、カルシウム系充填材などが混在すると、回収カーボンの純度が低下する。

したがって循環設計では

・ZnOを必要最小限にする
・無機補強材の種類を増やさない
・金属系添加剤を減らす

という方向が有利になる。補強材を単純化することは、脱硫や再混練工程にも有利に働く。

ポリマー構成の整理

現行タイヤは

NR
BR
SSBR
ESBR

などが混在することが多い。さらに樹脂や複数オイルが加わり、材料構造はかなり複雑になる。

循環設計ではポリマーアーキテクチャを整理する方がよい。

・NR主体系
・SSBR / BR主体系

このように用途ごとに材料系を整理する。材料を増やすのではなく、材料設計全体を単純化する方向である。

交換可能な架橋

最も重要な要素は架橋構造である。

従来の硫黄架橋は不可逆性が強く、再生時に主鎖切断が起こりやすい。これに対して、交換可能な結合を部分導入したネットワークは、使用中はネットワークを維持しながら、加熱条件で再配置する可能性がある。

研究例

・ジスルフィド交換
・イミン結合ネットワーク
・エラストマー vitrimer

これらはまだ量産材料ではないが、再加工可能なゴムネットワークとして研究が進んでいる。

 

現実的な配合案

高負荷トレッドを最初から循環設計にするのは難しい。現実的な入口は次の部材になる。

・サイドウォール
・ベーストレッド
・ビードフィラー周辺

この領域はトレッド表層ほど動的要求が高くない。

循環対応サイドウォール配合

ポリマー

NR 50 phr
BR 30 phr
ENR 20 phr

補強系

rCB 20 phr
N550 20 phr
シリカ 10 phr

可塑化

バイオ系オイル 6から8 phr

架橋

硫黄 0.8から1.2 phr
CBSまたはTBBS
ZnO 1.5から2 phr
ステアリン酸 1.5 phr

ネットワーク補助

ジスルフィド系補助剤 2から4 phr

この配合の狙いは、ENRによる極性導入とジスルフィド交換の足場形成である。rCBとの相性を改善しつつ、再加工性を確保する。

新品性能は通常サイドウォールの95程度を維持し、使用後に20から30 phr程度の再生材として戻すことを想定する。

循環対応ベーストレッド

ポリマー

SSBR 45 phr
BR 35 phr
ENR 20 phr

補強

シリカ 35 phr
rCB 15 phr
N660 10 phr

架橋

低硫黄設計
ZnO 1.5 phr

ここでは外層トレッドではなく、キャップ下層やベーストレッドを対象にする。転がり抵抗と耐久のバランスを維持しながら、再生適性の実証が可能になる。

循環型タイヤ材料は、完成品タイヤ全体を一度に変える形では進みにくい。部材単位で再生適性を確認しながら材料設計を更新していく形になる。サイドウォールやベーストレッドは、その最初の入口として比較的現実的な位置にある。