廃タイヤ化学原料化

2026-03-09

廃タイヤを化学原料へ転換する技術構想について、熱分解プロセス、石油化学原料化、産業構造の変化という観点から整理。

プロジェクトの位置づけ

NEDOグリーンイノベーション基金の一部として、使用済タイヤを化学原料へ戻す技術開発が位置づけられている。対象は廃タイヤのケミカルリサイクルであり、タイヤを燃料として利用する従来のサーマルリカバリーとは異なる経路を想定する。

背景には二つの条件がある。

・タイヤ需要の長期的増加
・脱炭素政策の強化

自動車保有台数の増加により、世界のタイヤ需要は今後も増加する見込みとされる。一方で、原料の多くは石油由来であり、カーボンニュートラル政策との整合が課題となる。

現在の廃タイヤ処理は燃料利用の比率が高く、資源循環という意味では材料として戻る量は限定的である。ケミカルリサイクルは、この構造を変更する試みとして位置づけられている。

 

技術構成

想定されているプロセスは、廃タイヤを分解して化学原料へ戻す段階的な構成になっている。

工程の概略

・廃タイヤの熱分解
・分解油の精製
・石油化学原料への転換
・モノマー製造

生成物として想定される主な化学品

・ブタジエン
・イソプレン
・BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)
・再生カーボンブラック

この構造は、石油精製と石油化学の既存設備との接続を前提としている。タイヤ由来の分解油を精製し、ナフサ系原料の一部として利用する形になる。

コンソーシアム構成

ブリヂストン
・廃タイヤ処理
・分解油生成
・材料評価

ENEOS
・石油精製
・石油化学原料化
・化学品製造

タイヤメーカーと石油会社の役割分担によって、既存インフラとの接続が図られている。

 

産業構造の変化

従来の廃タイヤ利用は以下の構造である。

廃タイヤ
→ 燃料
→ エネルギー回収

今回の構想では、物質循環のループを形成する。

廃タイヤ
→ 分解油
→ 石油化学原料
→ 合成ゴム
→ タイヤ

このループが成立するためには、複数の条件が関係する。

材料条件

・硫黄や窒素など不純物の除去
・分解油品質の安定化
・再生カーボンブラックの物性

産業条件

・石油化学設備との適合
・廃タイヤ収集システム
・化学品市場との接続

制度条件

・資源循環政策
・カーボンニュートラル政策
・廃棄物規制

研究開発は2020年代に実証段階へ進む想定であり、その後に商業化が検討されている。

タイヤを材料として再びタイヤへ戻す構造は、ゴム産業と石油化学産業の境界領域に新しいサプライチェーンを形成する可能性を持つ。