環境タイヤのライフサイクルCO₂排出量を算出しました

2025-09-01

リッパー株式会社が開発する環境タイヤについて、ライフサイクル全体でのCO₂排出量を算出しました。製造から使用、廃棄までを通じて環境負荷を抑える取り組みを紹介しています。

Ⅰ. はじめに

本記事では、一般社団法人日本自動車タイヤ協会様より公開されている「タイヤのLCCO₂算定ガイドライン」(参照①)に準拠し、リッパー株式会社で開発している環境タイヤのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(GHG : Green House Gas)の発生量をCO₂に換算した結果について、算出方法と共に公開します。算出に使った幾つかの係数やGHG排出量に関しては、参照①と同様に非公開とさせていただきます。

Ⅱ. LCCO₂算定の考え方

基準フローと機能単位

本ガイドラインの基準フローは以下のとおり、タイヤ1本のライフサイクルとします。

対象は国内で販売されるPC(乗用車)のタイヤです。

  • PC環境タイヤ

  • PC一般タイヤ

なお、算定するライフサイクルの範囲(システム境界)、ライフサイクルの影響評価、算定の精度、規格の整合性についても、参考文献①に準拠しています。

Ⅲ. 各段階における算定手法(インベントリ分析)

各段階における算定手法及び代表タイヤをモデルにした算定事例を以下に示します。

代表タイヤサイズはJATMA内における2019年時点のタイヤサイズ毎の国内販売本数データを用い選定し、重量についてはJATMA内調査に基づき設定しました。

代表タイヤサイズの選定方法:参照①と同じく平均重量に近く販売数が最も多い195/65R15を選定しました。

表 1. 代表タイヤサイズ

タイヤ区分

代表タイヤサイズ

PC

195/65R15

 

表 2. 代表タイヤの重量

タイヤ区分

重量(単位:kg)

PC

環境タイヤ

8.6

一般タイヤ

8.6

 

1. 原材料調達段階

1) 原材料構成比

各タイヤの代表的な原材料構成比の例を下表に示します。環境タイヤの構成比は当社調べ、PC一般タイヤはJATMA内調査に基づき設定しました。

表 3. 代表的なタイヤ原材料構成比(重量比)※

原材料名

一般タイヤ

環境タイヤ

新ゴム

100.0

100

 

天然ゴム

39.0

30

合成ゴム

61.0

40

LIPPER(NR100-18)

30

LIPPER_CNF

6

カーボンブラック

50.0

0

プロセスオイル

8.0

15

有機ゴム薬計

8.0

24

無機配合剤

7.0

56

 

亜鉛華

3.0

5

酸化チタン

5

硫黄

3.0

2

シリカ

1.0

44

繊維計

10.0

8

スチールコード

15.0

14.1

ビードワイヤ

8.0

9.5

206.0

232.6

タイヤ実重量/新ゴム重量比

2.06

2.32

※新ゴム重量を 100 として設定

2) 原材料の生産における GHG 排出

① 各原材料の生産における GHG 排出係数

各原材料の生産における GHG  排出係数は、下表に示すとおりです。

表 4. タイヤ原材料の生産における GHG 排出係数

(単位:kgCO2e/kg)

原材料名

GHG 排出係数

出典・根拠

新ゴム

 

天然ゴム

6.71×10-1

P.W.Allen, The Malaysian Rubber Producers Research Association

“Energy accounting. natural versus synthetic rubber”

Rubber development vol32, no4, 1979

合成ゴム

3.71

IDEA のスチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムの排出係数をタイヤ、チューブ向け合成ゴム出荷量割合(日本ゴム工業会 統計、2018 年実績)で加重平均し算出した。

LIPPER_天然ゴム

1

当社で測定した結果

LIPPER_CNF

2.003

当社で測定した結果

カーボンブラック

***

JLCA データベース、カーボンブラック(2017)

プロセスオイル

***

IDEA、潤滑油(グリースを含む)

*JATMA 調査の比重 0.88kg/L を用い単位換算

有機ゴム薬計

***

IDEA、有機ゴム薬品

無機配合剤

 

亜鉛華

***

IDEA、亜鉛華

酸化チタン

***

IDEA、酸化チタン

硫黄

***

IDEA、回収硫黄

シリカ

***

IDEA、シリカゲル

繊維計

7.16

IDEA のポリエステルタイヤコード、ナイロンタイヤコード、 レーヨンの排出係数を消費量割合(JATMA 統計、2018 年度実績)で加重平均し算出した。

スチールコード

***

IDEA、鋼索(鋼より線を含む)

ビードワイヤ

***

IDEA、鋼索(鋼より線を含む)

※IDEA:LCI データベース IDEA version 2.3 (2019/12/27)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 IDEA ラボ

② タイヤ 1 本あたりの原材料の生産における GHG 排出量の算定

タイヤ 1 本あたりの原材料の生産における GHG 排出量は下式により求められる。

(原材料の生産における GHG 排出量((kgCO2e/本))=Σ{(タイヤ重量(kg)) × (各原材料構成比)

×(原材料の生産における GHG 排出係数 (kg-CO2e/kg))}

表 5. 原材料の生産における GHG 排出量

(単位:kgCO2e/本)

原材料名

一般タイヤ

環境タイヤ

新ゴム

 
 

天然ゴム

1.1

0.7

合成ゴム

9.4

5.2

LIPPER_天然ゴム

1.1

LIPPER_CNF

0.4

カーボンブラック

***

0

プロセスオイル

***

0.4

有機ゴム薬計

***

6.2

無機配合剤

 
 

亜鉛華

***

0.5

酸化チタン

0.3

硫黄

***

0.001

シリカ

***

2.6

繊維計

***

2.0

スチールコード

***

1.6

ビードワイヤ

***

1.1

***

21.9

3) 原材料の輸送における GHG 排出

① 原材料の輸送における設定

原材料の輸送においては、下表の距離を輸送するものと設定しました。

表 6. 原材料の輸送シナリオの設定

原材料名

輸送距離

備考

天然ゴム

 

海運前陸送:500km

国際海運:原産国(東南アジア諸国)からシンガポール(1st hub)、上海等(2nd hub)を経由して日本に到着するものとする。

海運後陸送:500km

・国際海運前後の輸送は 10 トントラックで500km 片道輸送、積載率 50 %とする

(県間輸送として、東京-大阪程度の距離を想定)

・国際海運のフィーダー船は 2,000TEU、本船は 10,000TEU 以上とする。

(JATMA 調査結果(2019 年))

合成ゴム

陸送 500km

・東京-大阪程度の距離を想定

・輸送手段は 10 トントラック、積載率

50 %と設定。

カーボンブラック

プロセスオイル

有機ゴム薬計

亜鉛華

硫黄

シリカ

繊維計

スチールコード

ビードワイヤ

 

表 7. 原材料の輸送における GHG 排出係数

(単位:kgCO2e/kg)

原材料名

GHG 排出係数

備考

天然ゴム

2.97×10-1

JATMA 調査結果(2019 年)

・海送は代表的な 18 航路での GHG 排出量を調査

・陸送は燃料使用量×GHG 排出係数÷積載重量で算定燃費算定式:省エネ法に準拠

ln x=2.71-0.812 ln (y/100)-0.654 ln z x:貨物輸送量当たりの燃料使用量

(単位 l/トンキロ) y:積載率(単位%)

z:貨物自動車の最大積載量(単位 kg) 軽油のGHG 排出係数:***kgCO2e/l

(IDEA、軽油の燃焼エネルギー)

合成ゴム

***

上記陸送の方法で算定

LIPPER_

天然ゴム

***

LIPPER_CNF

***

カーボンブラック

***

プロセスオイル

***

有機ゴム薬計

***

亜鉛華

***

酸化チタン

***

硫黄

***

シリカ

***

繊維計

***

スチールコード

***

ビードワイヤ

***

② タイヤ 1 本あたりの原材料の輸送における GHG 排出量の算定式

タイヤ 1 本あたりの原材料の輸送における GHG 排出量は下式により求められます。

(原材料の輸送における GHG 排出量(kgCO2e/本))

=Σ{(タイヤ重量(kg)) × (各原材料構成比)×(原材料の輸送における GHG 排出係数 (kgCO2e/kg))}

表 8. 原材料の輸送における GHG 排出量

(単位:kgCO2e/本)

原材料名

一般タイヤ

環境タイヤ

新ゴム

 

天然ゴム

0.48

0.31

合成ゴム

***

0.13

LIPPER_天然ゴム

***

0.1

LIPPER_CNF

***

0.02

カーボンブラック

***

0

プロセスオイル

***

0.05

有機ゴム薬計

***

0.08

無機配合剤

***

 

亜鉛華

***

0.02

酸化チタン

0.02

硫黄

***

0.01

シリカ

***

0.15

繊維計

***

0.03

スチールコード

***

0.05

ビードワイヤ

***

0.03

1.15

1.00

4) 原材料調達段階全体での GHG 排出量

原材料調達段階全体における GHG  排出量は、下表に示すとおりです。(原材料調達段階全体における GHG 排出量)

= (原材料の生産における GHG 排出量) +(原材料の輸送における GHG 排出量)

表 9. 原材料調達段階全体における GHG 排出量

 

一般タイヤ

環境タイヤ

原材料調達段階

原材料生産

26.3

21.9

原材料輸送

1.1

1.0

27.4

22.9

2. 生産段階と流通段階

弊社の環境タイヤは現在開発中であるため、正確な生産段階と流通段階におけるGHG排出量は算定できません。そのため、PC低燃費タイヤの結果を採用しています(詳しい算出方法は参照①をご覧ください)。

3. 使用段階

タイヤの使用段階については、タイヤが自動車に装着され、自動車の走行に伴って排出されるGHG排出量のうち、タイヤの寄与分を配分して算定します。

1) タイヤ使用条件の設定

GHG排出量を算定する各タイヤ使用条件を表10に示します。なお、これらの代表タイヤサイズにおけるRRC値は例であり、市場平均値ではありません。

表 10. GHG 排出量を算定するタイヤ使用条件の設定

区分

PC

単位

備考

一般タイヤ

環境タイヤ

タイヤサイズ

195/65R15

 

タイヤ転がり抵抗係数(RRC)

10.5

7.875

 

JATM選定※1

(タイヤ転がり抵抗指数)

100

75

%

一般タイヤ=100

車両燃費

15.25

16.3

km/l

JATMA調査結果

0.0656

0.0644

l/km

タイヤ燃費寄与率

0.179

0.138

 

車両燃費

ガソリン

 

装着タイヤ本数

4

 

タイヤ走行寿命

30,000

JATMA調査結果

※1 「タイヤの使用期間に関する調査分析業務報告書」(環境省、2016、2017 年)、「日本国温室効果ガスインベントリ報告書(国立環境研究所 地球環境研究センター 2020 年)をもとに設定。

参考文献①で算出されたタイヤ転がり抵抗以外に起因する燃費(0.0538 l/km)を使い、RRC=9.45である PC 環境タイヤを装着したと仮定した場合の車両燃費、およびタイヤの燃費寄与率は以下のように算出される。

PC 環境タイヤを装着した車両燃費 = タイヤ転がり抵抗に起因する燃費 + タイヤ転がり抵抗以外の抵抗に起因する燃費

= 0.0027 ÷ 2.4 x 9.45 + 0.0538

= 0.0644 (l/km)

PC環境タイヤの燃費寄与率 = タイヤ転がり抵抗に起因する燃費 ÷ 車両燃費

= 0.0027 ÷ 2.4 x 9.45 ÷ 0.0644

= 0.165

2) 使用段階の GHG 排出量

① 車両燃料の GHG 排出係数

表 11. 車両燃料の GHG 排出係数

(単位:kgCO2e/l)

区分

GHG 排出係数

出典

ガソリン

2.84

IDEA、ガソリンの燃焼エネルギー

軽油

2.99

IDEA、軽油の燃焼エネルギー

② タイヤ起因燃費(l/km)及び GHG 排出量

タイヤ起因の燃費(l/km)及び GHG 排出量は、下式により求められます。(タイヤ起因の燃費(l/km))

= (タイヤ 1 本・1km あたりの燃費(l/km)) × (タイヤ走行寿命)

= (車両燃費) × (タイヤの燃費寄与率) ÷ (タイヤ本数) × (タイヤ走行寿命)

(タイヤ起因の GHG  排出量) = (タイヤ起因の燃費(l/km)) × (車両燃料の GHG 排出係数)

表 12. タイヤ起因の燃費(l/km)及び GHG 排出量

区分

  

単位

一般タイヤ

環境タイヤ

 

タイヤ 1 本・1km あたりのタイヤ起因の燃費 (l/km)

***

2.21×10-3

l/km・本

タイヤ起因の燃費(l/km)

(タイヤ寿命あたり)

***

66.4

l/本

タイヤ起因の GHG 排出量

(タイヤ寿命あたり)

250.5

188.7

kgCO2e/本

4. 廃棄・リサイクル段階

廃棄・リサイクル段階における GHG 排出量を算定します。

1)使用済みタイヤの輸送における GHG 排出

①使用済みタイヤの輸送の条件設定

使用済みタイヤの輸送の GHG 排出量は、表 13 に示す条件設定に基づいて算定します。

表 13. 使用済みタイヤの輸送の条件設定

区分

内容

備考

対象

使用済みタイヤが発生した拠点(販売店等)から廃棄物処理施設までの輸送

輸送距離

100km 片道輸送

県内輸送として、県境-県境の距離を想定

輸送手段

2 トントラック

JATMA 設定値

積載率

50%

JATMA 設定値

燃費算定式

省エネ法に準拠

ln x=2.71-0.812 ln (y/100)-0.654 ln z x:貨物輸送量当たりの燃料使用量

(単位 l/トンキロ) y:積載率(単位%)

z:貨物自動車の最大積載量(単位 kg)

軽油のGHG 排出係数

***kgCO2e/l

IDEA、軽油の燃焼エネルギー

使用済みタイヤの輸送の GHG排出係数

0.0547kgCO2e/kg

燃料使用量×GHG 排出係数÷積載重量

②使用済みタイヤの輸送における GHG 排出量

使用済みタイヤ1本あたりの輸送におけるGHG排出量は、下式により求めます。
(使用済みタイヤの輸送におけるGHG排出量)=(使用済みタイヤ重量)×(使用済みタイヤの輸送のGHG排出係数)

表 14. 使用済みタイヤ 1 本あたりの輸送における GHG 排出量

区分

PC

単位

備考

一般タイヤ

環境タイヤ

新品タイヤ重量(a)

8.6

8.2

kg

表 2 より

摩耗率(b)

15

%

※1

使用済みタイヤ重量(a)x(1-b)

7.3

7

kg

 

使用済みタイヤの輸送の GHG 排出係数(c)

0.0547

kgCO2e/kg

表 13 より

使用済みタイヤの輸送における GHG 排出量

0.4

0.38

kgCO2e/本

 

(a)x(1-b)×(c)

※1  タイヤの仕様書計算等から全摩耗時の減量%を設定

2) 熱利用における GHG 排出と排出削減効果

① 熱利用における GHG 排出
a) 新品タイヤにおける炭素含有量

タイヤ原材料構成比と各原材料の炭素量比から、タイヤの炭素含有量を求めます。なお、再生可能な原材料(天然ゴム)についてはカーボンニュートラルな原材料ととらえ、炭素含有量から除きます。
また、使用済みタイヤの熱利用に際しては、タイヤをカットするプロセスが必要となる場合がありますが、GHG排出量がタイヤの燃焼に比べて非常に小さいことから(約1/1,000)、除外します。

表 15.      新品タイヤにおける炭素含有量 ※1

原材料名

炭素含有量

(カーボンニュートラル考慮)

炭素量比

カーボンニュートラル ※3

PC

※2

一般タイヤ

環境タイヤ

 

新ゴム

 

天然ゴム

0

0

0.88

0

合成ゴム

54.3

35.6

0.89

1

LIPPER_天然ゴム

0

0

  

LIPPER_CNF

0

0

  

カーボンブラック

49

0

0.98

1

プロセスオイル

6.7

12.6

0.84

1

有機ゴム薬計

5.4

16.8

0.67

1

※4

無機配合剤

N

 

亜鉛華

0

0

0

N

酸化チタン

0

0

N

硫黄

0

0

0

N

シリカ

0

0

0

N

繊維計

6.2

5

0.62

1

スチールコード

0

0

0

N

ビードワイヤ

0

0

0

N

121.6

69.2

タイヤ中の炭素含有率※5

0.59

0.3

※1:新ゴム重量 100 としたときの重量指数。表 3の原材料構成比に炭素量比を掛けて算出

※2:各原材料の炭素量比は、基本分子構造をベースに JATMA で推定

※3:カーボンニュートラル=0, カーボンニュートラルでない=1, 炭素分を含まない原材料=N

※4:有機ゴム薬については、代表的な加硫促進剤、老化防止剤の基本分子構造から計算した。

※5:表 3 の新ゴム重量を 100 としたときの総重量指数(PC 一般タイヤであれば 206.0)で、本表の炭素含有量計を除して算出

b) タイヤ摩耗後の材料構成成分及び炭素含有量の変化

タイヤの摩耗はゴム成分のみであるため、全構成重量から繊維計、スチールコード、ビードワイヤの重量を除いたものから比例配分して減じます。

表 16.摩耗減量による炭素含有量の変化

区分

PC

備考

一般タイヤ

環境タイヤ

新品タイヤ

構成重量 (a)

206

232.6

※1

摩耗成分重量(b)

173

231

※2

炭素含有量(c)

121.6

69.24

表15 で計算

炭素含有率(d)

59.00%

29.80%

使用済みタイヤ

構成重量(e)

175.1

197.7

(a)×(1-摩耗率※3)

摩耗成分重量(f)

142.1

196.1

(b)-(a-e)

炭素含有量(g)

101

59.5

※4

炭素含有率

57.70%

30.10%

(g)/(e)

※1 表 3 新ゴム量 100 としたときの重量指数

※2 構成重量(a)から繊維計、スチールコード、ビードワイヤを除いたもの(ゴムコンパウンド重量指数)

※3 表 14 に記載

※4 新品の摩耗成分の炭素含有量計(表 15 の天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、プロセスオイル、有機ゴム薬の合計)×((f)÷(b)) +新品のスチールコード、ビードワイヤ、繊維計の炭素含有量

c) 使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ 1kg あたりの GHG 排出量

使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ1kgあたりのGHG排出量は、下式にて求めます。
(使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ1kgあたりのGHG排出量)=(使用済みタイヤの炭素含有率)×44÷12

表 17. 使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ 1kg あたりの GHG 排出量

区分

一般タイヤ

環境タイヤ

 

使用済みタイヤの炭素含有率(表 16 より)

57.7

30.1

%

使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ 1kg あたり GHG 排出量

2.114

1.104

kgCO2e/kg

d) 使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ 1 本あたりの GHG 排出量

使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ1本あたりのGHG排出量は、下式により求めます。
(使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ1本あたりのGHG排出量)=(使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ1kgあたりのGHG排出量)×(使用済みタイヤ重量)

表 18. 使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ 1 本あたりの GHG 排出量

使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ 1kg あたりの GHG 排出量

2.114

1.104

kgCO2e/kg

使用済みタイヤ重量

7.3

7.0

kg

使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ 1 本あたり GHG 排出量

15.5

7.7

kgCO2e/本

② 熱利用における GHG 排出削減効果

使用済みのタイヤを熱源として利用しエネルギーを回収することにより、化石燃料の消費が代替され、GHG排出が削減されると考えることができ、この削減効果を算定します。

a) 使用済みタイヤの熱利用にともない代替される化石燃料

使用済みタイヤの主な熱利用先として、製紙業界が挙げられます。製紙会社へのヒアリングの結果、主にC重油の代わりに使用済みタイヤを使用しているため、使用済みタイヤはC重油を代替しているものとします。

b) 使用済みタイヤの熱利用による GHG 排出削減効果

使用済みタイヤの熱利用によるGHG排出削減効果は、下式により求めます。
(使用済みタイヤの熱利用によるGHG排出削減効果)=(C重油のGHG排出係数)×(タイヤの発熱量)×(使用済みタイヤ重量)

表 19. 使用済みタイヤの熱利用による GHG 排出削減効果

区分

PC

単位

備考

一般タイヤ

環境タイヤ

C 重油の GHG 排出係数

***

kgCO2e/MJ

※1

タイヤの発熱量

***

MJ/kg

※2

使用済みタイヤ重量

7.3

7

kg

表 14より

GHG 削減効果

-20.4

-19.4

kgCO2e/本

 

※1 IDEA C 重油の燃焼エネルギー

※2 IDEA 廃タイヤの高位発熱量

c) 熱利用における GHG 排出(全体)

熱利用におけるGHG排出量(全体)は、下式により求めます。集計結果については、「表20. 廃棄・リサイクル段階におけるGHG排出量と排出削減効果」を参照してください。

(熱利用におけるGHG排出量)=(使用済みタイヤの輸送におけるGHG排出量)+(使用済みタイヤ燃焼時のタイヤ1本あたりのGHG排出量)−(使用済みタイヤの熱利用によるGHG排出削減効果)

3) 廃棄・リサイクル段階における GHG 排出量と排出削減効果
廃棄・リサイクル段階における GHG 排出及び排出削減効果

各リサイクル手法別の GHG 排出量に、リサイクル割合(熱利用78%)により重みづけを行い、廃棄段階におけるGHG 排出量とリサイクルによる排出削減効果を下表のとおりとした。

表 20. 廃棄・リサイクル段階における GHG 排出量と排出削減効果

(単位:kgCO2e/本)

区分

PC

備考

一般タイヤ

環境タイヤ

リサイクル割合

熱利用

78%

JATMA調査

リサイクル以外

22%

GHG排出量

輸送

0.4

0.4

表 14

熱利用

12.1

6

表 18 のGHG 排出量

×熱利用の割合

単純焼却

3.4

1.7

表18のGHG 排出量

×リサイクル以外の割合

排出削減効果

熱利用

-15.9

-15.2

表 19のGHG 排出削減量×熱利用の割合

5. ライフサイクルでの GHG 排出量

代表的なタイヤに基づくライフサイクルでのGHG排出量の合計は、以下に示すとおりです。

表 21. ライフサイクルでの GHG 排出量(詳細)

(単位:kgCO2e/本)

 

一般タイヤ

環境タイヤ

原材料調達段階

原材料生産

26.3

21.9

原材料輸送

1.1

1.00

生産段階

生産

6.9

6.6

流通段階

輸送

0.9

0.9

使用段階

使用

250.5

188.7

廃棄・リサイクル段階

排出量

輸送

0.4

0.4

熱利用

12.1

6.0

単純焼却

3.4

1.69

GHG 排出量合計

301.5

227.1

廃棄・リサイクル段階

削減効果

熱利用

-15.9

-15.2

ライフサイクルでの GHG 排出量(削減効果考慮)

285.6

212.0

表 22 ライフサイクルでの GHG 排出量(段階別)

(単位:kgCO2e/本)

区分

PC

一般タイヤ

環境タイヤ

原材料調達段階

27.4

9.60%

22.9

8.99%

生産段階

6.9

2.40%

6.6

2.59%

流通段階

0.9

0.30%

0.9

0.33%

使用段階

250.5

87.70%

188.7

89.0%

廃棄リサイクル段階

0

0.00%

-2.2

-0.86%

 

排出

15.9

5.60%

13

5.11%

排出削減効果

-15.9

-5.60%

-15.2

-5.95%

合計

285.6

100.00%

212.0

100.00%

1 本あたりのライフサイクル GHG 排出量(kgCO2e)

1 本あたりのライフサイクル GHG 排出量(表)

  • PC一般タイヤ 1 本あたりのライフサイクル GHG 排出量 = 285.6 kgCO2e
  • PCホワイト タイヤ 1 本あたりのライフサイクル GHG 排出量 = 212.0 kgCO2e
 

原材料調達

生産

流通

使用

廃棄・リサイクル

PC一般タイヤ

27.4kgCO2e

9.6%

6.9kgCO2e

2.4%

0.9kgCO2e

0.3%

250.5kgCO2e

87.7%

0.0kgCO2e 0.0%

※廃棄・リサイクル段階の GHG 排出量:排出 = 15.9 kgCO2e, 削減効果 =-15.9kgCO2e

PC環境 タイヤ

22.9kgCO2e

 8.99%

6.6kgCO2e

2.59%

0.9kgCO2e

0.33%

188.7kgCO2e

89.0%

-2.2kgCO2e

-0.86%

※廃棄・リサイクル段階の GHG 排出量:排出 = 13.0 kgCO2e, 削減効果 =-15.1 kgCO2e

本記事ではタイヤ同士の寿命が同じと考え、タイヤ1本あたりの評価を行っています。しかし、寿命の異なるタイヤ同士を比較する際には、タイヤ1本あたりでの比較は適切ではありません。この場合には、例えば単位距離あたりの比較などが考えられます。その場合には、本記事で示すように、走行寿命が異なるタイヤごとにLCCO₂を算出し、さらに単位走行距離あたりの排出量に換算して相対比較します。

(単位走行距離あたりのGHG排出量)=(タイヤLCCO₂ × 単位走行距離 ÷ 走行寿命)

6. 参照

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